相続人の一人と連絡が取れない不動産は売却できる?
- 7月30日
- 読了時間: 7分

相続した実家や土地を売却したくても、相続人の一人と連絡が取れず、話合いが止まることがあります。
長年疎遠、住所が分からない、手紙を送っても返事がない、電話を拒否されているなど、事情はさまざまです。しかし、その人が法律上の相続人であれば、存在を無視して遺産分割協議を成立させることは原則できません。
まず「所在が分からない」のか、「所在は分かるが返事がない」のか、「反対している」のかを分けて考えます。状況によって、必要な手続と相談先が変わるためです。
相続人や物件の状況をまとめて整理したい場合は、相続不動産の整理・売却相談をご確認ください。
この記事の結論
連絡が取れない相続人を外して不動産全体を売却することは、原則としてできません。
最初に確認するのは次の4点です。
その人が本当に相続人か
現在の住所や連絡先を調べたか
返事がないのか、反対しているのか
不動産を売却する必要性と条件を説明できるか
所在が分からない場合は、戸籍の附票等による住所調査を行います。それでも所在不明であれば、家庭裁判所へ不在者財産管理人の選任を申し立てる方法があります。
所在は分かるものの話合いに応じない場合は、内容証明郵便や専門家からの連絡を行い、それでもまとまらなければ遺産分割調停を検討します。
連絡が取れない状態を3つに分ける
1.住所も居所も分からない
現在の住所が分からず、家族も所在を把握していない状態です。
戸籍の附票、住民票の除票、親族への確認などで所在を調べます。利害関係人が取得できる書類や必要な理由は個別事情で異なるため、司法書士や弁護士へ確認します。
2.住所は分かるが返事がない
手紙や電話への反応がなく、協議が進まない状態です。
売却したいという結論だけを送るのではなく、査定結果、維持費、空き家の状態、売却後の想定手取り、選択肢、回答期限をまとめて送ります。内容証明郵便は、いつ、どのような内容を送ったかを記録する手段として利用できます。
3.連絡は取れるが反対している
相手が価格、分配、思い出、他の相続人への不信などを理由に反対している状態です。
単なる連絡不足ではなく意見対立なので、反対理由を分けて整理します。話合いでまとまらなければ、家庭裁判所の遺産分割調停・審判を検討します。

まず行う所在確認と連絡
相続人を戸籍で確定する
親族関係だけで判断せず、亡くなった人の出生から死亡までの戸籍等を確認し、法定相続人を確定します。
相続人が多い場合は、相続人が多い不動産を売却するまでの進め方もあわせてご覧ください。
現在の住所を確認する
戸籍の附票には、その戸籍に在籍している間の住所履歴が記録されます。取得できる人や必要書類は自治体により確認が必要です。
住所が分かったら、普通郵便だけでなく、簡易書留や内容証明郵便など、到達や送付内容を確認しやすい方法を検討します。

感情的な要求ではなく判断材料を送る
最初から署名・押印を求めると、警戒されることがあります。
次の資料を簡潔にまとめます。
不動産の所在地と名義
相続人の範囲
現在の管理状況
査定価格
維持費や修繕リスク
売却・保有・賃貸の選択肢
想定される費用と手取り
回答してほしい事項と期限
代表窓口を決め、家族ごとに違う説明をしないことも重要です。
所在不明なら不在者財産管理人を検討する
住所や居所が分からず、容易に戻る見込みがない相続人については、家庭裁判所へ不在者財産管理人の選任を申し立てる方法があります。
不在者財産管理人は、不在者の財産を管理・保存します。遺産分割協議への参加や不動産の処分など、通常の管理を超える行為には、家庭裁判所の権限外行為許可が必要です。裁判所の案内でも、許可を得たうえで不在者に代わって遺産分割や不動産売却を行えるとされています。
申立てでは、不在を示す資料、財産資料、相続関係資料、候補者情報などが求められます。また、管理費用に備えて予納金を求められる場合があります。
不在者財産管理人は、他の相続人の希望をそのまま実現する代理人ではなく、不在者本人の利益を守る立場です。売却条件や代金配分も、その観点から確認されます。
返事がない・反対している場合の対応
所在が分かっている相続人については、不在者財産管理人の制度ではなく、本人との協議を進めます。
まず、書面で判断材料と回答期限を伝えます。相手が不信感を持っている場合は、複数社の査定や物件調査報告を共有し、価格や費用の根拠を見えるようにします。
それでも遺産分割の話合いがつかない場合は、家庭裁判所の遺産分割調停または審判を利用できます。調停では、裁判所が事情や資料を確認し、各当事者の意向を聞きながら合意を目指します。
相手が単に返事をしない場合でも、調停を申し立てれば自動的に売却できるわけではありません。調停や審判の中で、不動産の取得者や分割方法を決める必要があります。

相続人を探している間に進められる売却準備
相続人全員の合意前でも、査定や物件調査は進められます。
確認する主な項目は、境界、越境、接道、私道、再建築の可否、未登記建物、残置物、賃貸借、抵当権などです。
私道や接道条件は私道の整理・売却相談、空き家管理や残置物は空き家・古家・老朽化物件の相談をご確認ください。
査定や調査を先に進めると、相手へ具体的な売却条件を示せます。また、相続登記や家庭裁判所の手続に時間がかかる間に、境界や建物の問題を整理できます。

よくある質問
連絡が取れない相続人を外して協議書を作れますか?
原則としてできません。その人が相続人であれば、参加しない遺産分割協議は有効に成立しない可能性があります。
数年間連絡が取れなくても相続権はなくなりませんか?
連絡がないことだけで相続権が消えるわけではありません。所在調査や必要な法的手続を行います。
内容証明を送れば売却できますか?
内容証明は送付内容を記録する手段であり、同意の代わりにはなりません。相手の合意または家庭裁判所の手続が必要です。
不在者財産管理人が選ばれればすぐ売却できますか?
不動産売却や遺産分割には、通常、家庭裁判所の権限外行為許可が必要です。売却条件も不在者の利益を踏まえて審査されます。
相続人申告登記をすれば売却できますか?
相続人申告登記だけでは取得者や持分が確定しないため、そのまま売却はできません。法務省も相続人申告登記を相続登記義務を簡易に履行する制度として案内しています。
まとめ
相続人の一人と連絡が取れなくても、状況を整理し、必要な手続を行えば売却へ進める可能性があります。
まず相続人を確定し、住所調査と連絡を行います。所在不明なら不在者財産管理人、所在は分かるものの協議がまとまらなければ遺産分割調停・審判を検討します。
同時に査定や物件調査を進め、連絡が取れたときや家庭裁判所の手続が進んだときに、具体的な条件を示せる状態を整えることが大切です。
連絡が取れない相続人がいて進め方に迷っている方へ
さくら都市デザイン株式会社では、相続登記前の段階から、査定、現地・役所調査、境界、私道、未登記建物、空き家管理などを整理します。
必要に応じて司法書士や弁護士等と連携し、所在確認後の売却条件や手続の順番をご案内します。
関連記事
相続人の中に認知症の人がいる場合、不動産を売却できる?
遺産分割協議が終わっていない不動産は売却できる?
あわせて確認したい相談ページ
参考文献・公的資料
裁判所「不在者財産管理人選任」
裁判所「不在者財産管理人の権限外行為許可」
裁判所「遺産分割調停」
裁判所「相続・遺産分割」
法務省「相続人申告登記について」
※申立て方法、必要書類、予納金、売却許可の判断は個別事情や裁判所により異なります。公開時点で最新情報を確認してください。




コメント