連棟古家の2つの出口|隣接所有者への売却と切り離し売却の比較事例
同じ古い2戸連棟でも、「そのまま売る方がよいケース」と「切り離すことで売却しやすくなるケース」があります。

連棟建物だからといって、必ず売却が難しいわけではありません。
築年数が比較的新しく、建物状態が良ければ、そのまま売却したり、必要に応じてリフォームして売却できるケースもあります。
今回紹介する2件は、いずれも築年数が古く、建物をそのまま活用するよりも、隣接所有者への売却や切り離し・解体を検討した方が現実的だった事例です。
一方の事例では、切り離しに伴う費用やリスクが大きかったため、隣接所有者へそのままの状態で売却しました。
もう一方では、隣接所有者との調整を経て、建物を切り離して解体したうえで売却しています。
連棟古家では、「切り離せるか」だけではなく、どの方法が売主にとって最も負担が少なく、価格面でも有利なのかを比較することが重要です。
項目 | ケースA | ケースB |
エリア | 東京都江東区 | 東京都板橋区 |
建物 | 築年数の古い2戸連棟 | 築年数の古い2戸連棟 |
売却対象 | 約25坪・賃貸中 | 10年以上空き家 |
隣接側 | 約10坪・小さな飲食店が入居 | 所有者が居住 |
当初の検討 | 切り離し売却・隣接所有者への売却 | 隣接所有者への売却・切り離し |
最終方法 | 隣接所有者へそのまま売却 | 切り離し・解体後に売却 |
主な課題 | 立退き、特殊工事、営業への影響、建物リスク | 隣接所有者との合意、補修内容、工事リスク |
売却まで | 約8〜9か月 | 約1年10か月 |
ケースA|隣接所有者へそのまま売却した事例
売却対象となるのは、2戸がつながった古い連棟建物の一方でした。
こちら側の土地は約25坪で、建物には事業用の入居者がいました。
隣接するもう一方は土地約10坪で、小さな飲食店が入居していました。
どちらも入居中で、建物も古い状態です。
売却対象側は約25坪あったため、土地として見れば一定の広さがありました。しかし、建物が隣とつながっている以上、自分の側だけを通常の戸建てと同じように簡単に解体することはできません。
また、古い建物を賃貸中のまま売却しても、十分な価格がつきにくい状況でした。
そこで、切り離して土地として売却する方法と、隣接所有者へそのまま売却する方法の両方を比較しました。
切り離しには、工事費以外の負担も大きかった
切り離しを行う場合、まず隣接所有者との協議が必要です。
さらに今回は、隣接建物に飲食店が入っていました。
工事内容によって営業に影響が出れば、建物補修だけでなく、状況によっては営業補償などが必要になる可能性もあります。
こちら側も賃貸中だったため、土地として売却するのであれば入居者の立退きが必要です。
加えて、建物自体が古いため、一方を切り離すことで残る建物に歪みや傾きなどが生じる可能性も考えなければなりません。
切り離し工事そのものも特殊で、一般的な解体工事より費用が高くなります。
入居者の立退き、特殊な切り離し工事、隣接建物の補修、隣接入居者への説明、営業補償の可能性まで含めて検討する必要がありました。
費用は事前に読み切りにくく、問題が増えるほど負担も大きくなります。
売却価格を上げるために切り離しても、それ以上に費用やリスクが増えるのであれば、合理的とは言えません。

隣接所有者にとっては、取得するメリットがあった
そこで注目したのが、隣接所有者側のメリットです。
売却対象は約25坪、隣接地は約10坪でした。
隣接所有者が約10坪だけを将来建て替える場合、土地が小さいため活用方法が限られます。
一方、今回の約25坪を取得して一体化できれば、合計約35坪となります。
将来的な建替えや売却の際にも、土地の使い方や選択肢が広がります。
隣接所有者は自宅としてではなく、投資用不動産として保有していました。
そのため、単に「隣の土地を買いませんか」と伝えるより、取得後の資産価値や将来の活用メリットを説明する方が、相手にとって判断しやすいと考えました。
当初、隣接所有者からは売却する予定はないと聞いていました。
そこで、まずはこちら側が売却を考えていることと、場合によっては切り離して売却する可能性があることを説明しました。
そのうえで、一体化した場合のメリットについて協議を進め、最終的には隣接所有者がこちらの不動産を購入することになりました。
立退きも切り離しも行わず、約8〜9か月で売却
最終的には、こちら側の入居者にも立ち退いてもらわず、建物もそのままの状態で隣接所有者へ引き渡しました。
これにより、立退き費用、特殊な切り離し工事、隣接建物の補修、隣接入居者への対応などを行う必要がなくなりました。
これらの費用やリスクを回避できた分、売却価格にも反映することができました。
また、立退きや工事に必要となる時間も省けたため、費用だけでなく売却スピードの面でもメリットがありました。
相談から売却までは約8〜9か月です。
この事例では、切り離さないことで、費用・リスク・時間を抑えながら、より良い条件で売却できたことが大きなポイントでした。
ケースB|切り離し・補修後に売却した事例
もう一方の物件も、2戸がつながった古い連棟建物でした。
こちらは10年以上空き家となっており、長期間使われていない状態でした。
過去には複数の不動産会社へ査定や売却相談をしていましたが、提示される価格は希望より低く、その後も売却までは進みませんでした。
連棟建物を整理するには、結局のところ隣接所有者との調整が必要だったためです。
隣接所有者の家族まで話を届けることから始めた
隣接建物には所有者本人が住んでいました。
訪問営業などについては警戒しており、これまでの不動産会社からの話も、家族まで十分に伝わっていなかった可能性がありました。
そこで、単なる売却営業ではなく、隣接する連棟建物の切り離しについて相談が必要であることを具体的に説明したところ、所有者の娘さんと話をすることができました。
連棟建物では、「隣と話す」というだけでは十分ではありません。
実際に誰が意思決定に関わるのかを確認し、内容を理解してもらうところまで進める必要があります。

まずは隣接所有者が購入する可能性を検討
娘さんと話をすると、将来的に現在住んでいる方が施設へ入る可能性があり、その際には自宅を売却することも考えているとのことでした。
そこで最初に検討したのが、隣接所有者がこちらの物件を購入する方法です。
一体化できれば、将来売却するときの選択肢が広がります。
また、こちら側としても特殊な切り離し工事が不要になるため、工事費相当を考慮して、隣接所有者には購入しやすい条件を提示できることも説明しました。
ご家族で検討することになり、資料を送ったり再度説明したりしながら約9か月待ちました。
最終的な回答は、「今は購入しない」というものでした。
購入はしなくても、切り離しには協力してもらえた
隣接所有者が購入しないことが決まったため、次に切り離しについて協議しました。
売主側と隣接所有者には以前から近所付き合いがあり、関係も悪くありませんでした。
そのため、「購入はしないが、長年空き家になっている建物を整理するためであれば協力したい」という方向で話を進めることができました。
ただし、建物は築40年を超えています。
すでに多少の傾きや歪みがある可能性があり、一方を取り壊すことで残る建物にも多少の影響が出る可能性を事前に説明しました。
切り離した部分には新しい外壁を設け、解体中に雨が入らないよう施工方法も確認しました。
工事内容や補修範囲などを整理し、最終的には隣接所有者との間で合意書を締結しています。
ここまでで、相談開始から1年数か月が経過しました。
切り離し・壁補修・解体を行い、土地として売却
合意成立後、実際の切り離し工事へ進みました。
売却対象側の建物を解体し、残る隣接建物については外壁の修復・新設を行っています。
切り離しから補修までには、さらに2〜3か月ほどかかりました。
解体、切り離し、壁の補修にかかる費用は当社側で負担したため、売主には売却前に工事費を用意してもらっていません。
その後、建物のない土地として売却しました。
相談開始から最終的な売却まで、トータルで約1年10か月となりました。

同じ古い2戸連棟でも、出口は正反対
2つの事例は、どちらも築年数の古い2戸連棟でした。
しかし、最終的な解決方法は正反対です。
ケースAでは、切り離さないことで価値を守りました。
立退き、特殊工事、隣接建物への影響、営業への影響などを避け、隣接所有者へそのまま売却しています。
ケースBでは、切り離すことで売却できる状態を作りました。
隣接所有者に購入してもらう案は成立しませんでしたが、時間をかけて協議し、切り離しと壁補修について合意を得たことで、土地として売却できる状態にしました。
つまり、ケースAは「切り離さないことで価値を守った事例」、ケースBは「切り離すことで価値を作った事例」です。
連棟古家は「切り離せるか」だけでは判断できない
古い連棟建物の売却では、切り離し工事そのものだけを見ても十分ではありません。
確認すべきなのは、隣接建物の状態、所有者の意向、入居者の有無、営業への影響、立退き費用、工事費、補修リスク、必要な期間、切り離した後の土地価値まで含めた全体です。
場合によっては、切り離しが技術的に可能でも、隣接所有者へそのまま売却した方が有利です。
逆に、時間をかけて隣接所有者との合意を得ることで、切り離し後に土地として売却できるケースもあります。
連棟古家では、「切り離せるか」ではなく、「どの出口が最終的に売主にとって有利なのか」を比較することが重要です。
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連棟建物や長屋は、築年数や建物状態によって売却方法が大きく変わります。
そのまま売却できる建物もあれば、リフォームして売却できるケースもあります。
一方で、今回のように築年数が古く、解体や隣接所有者との調整を前提に考えた方がよい物件もあります。
過去に査定を受けても価格が低かった、隣接所有者との話が進まなかった、長期間空き家になっているといった物件でも、現在の建物状態や関係者の状況から、改めて整理方法を検討できます。





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