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相続した不動産の名義が故人のままでも売却できる?

  • 7月27日
  • 読了時間: 14分

更新日:7月30日


相続した実家や土地を売ろうとして登記事項証明書を確認すると、名義が亡くなった親や祖父母のままになっていることがあります。

この場合でも、不動産会社への相談や査定、物件調査を始めることはできます。ただし、故人は売買契約の当事者になれず、故人名義のまま買主へ所有権を移すこともできません。最終的には、相続人を確定し、不動産を取得する人への相続登記を済ませる必要があります。

大切なのは、「相続登記が終わるまで何もできない」と考えて売却準備を止めるのではなく、登記手続きと物件調査を並行して進めることです。

この記事では、故人名義のまま進められること、相続登記後でなければ進められないこと、売却までの順番を解説します。



この記事の結論


結論|査定・相談はできるが、買主への所有権移転までに相続登記が必要

故人名義のままでも、不動産会社への相談、査定、売却条件の整理、必要書類の確認などは進められます。一方、故人名義から買主名義へ直接変更することはできません。原則として、まず故人から不動産を取得する相続人へ相続登記を行い、その後、売買を原因として相続人から買主へ所有権移転登記を行います。売買契約を相続登記より先に結ぶ方法が検討されることもありますが、相続人全員の確認や登記完了を条件にするなど、慎重な設計が必要です。



故人名義のまま「できること」と「できないこと」


「故人名義のままでは売れない」という説明は、売却準備のすべてができないという意味ではありません。手続きの段階ごとに分けると、次のようになります。

手続き

故人名義のまま

主な注意点

不動産会社への相談

できる

所在地や固定資産税の課税明細などがあると進めやすい

机上査定・訪問査定

できる

査定額は相続登記の完了を保証するものではない

物件・権利関係の調査

できる

登記、道路、境界、越境、賃貸状況などを確認する

売却方法・価格の検討

できる

仲介・買取、現況売却などを比較できる

媒介契約

個別確認が必要

相続人・遺産分割の状況を確認して進める

売買契約

条件付きで検討される場合がある

売主となる人と相続登記の見通しが確定していることが重要

買主への所有権移転

できない

先に相続登記が必要

売買代金の受領・引渡し

原則できない

相続登記と所有権移転登記を整える


実務上のポイント|相続登記を待ってから査定を始める必要はありません

相続登記には、戸籍の収集や遺産分割協議などで時間がかかることがあります。その間に査定、現地確認、境界・道路・越境の調査、残置物の確認を進めれば、登記完了後の売却を早められます。ただし、査定を受けたことと、相続人全員が売却に合意したことは別です。先に売却を約束するのではなく、誰が不動産を取得し、誰が売主になるかを確認します。


故人名義から買主名義へ直接変更できない理由


不動産を売却するには、所有者である売主と買主が売買契約を結び、売主から買主へ所有権を移します。

しかし、登記名義人が亡くなっている場合、故人自身が売却の意思を示したり、契約書へ署名・押印したりすることはできません。また、相続が発生しただけでは、登記記録から「誰が最終的に不動産を取得したか」が明確にならないことがあります。

そのため、通常は次の2段階で登記を行います。


  1. 故人から不動産を取得する相続人への相続登記

  2. 相続人から買主への売買による所有権移転登記

相続人が一人の場合でも、故人名義から買主名義へ直接飛ばすのではなく、相続による権利の移転を登記したうえで売買による移転を行います。


相続人全員が自動的に売主になるとは限らない

遺言書がある場合は、その内容に従って不動産を取得する人を確認します。遺言書がない場合は、遺産分割協議によって一人が取得することも、複数人の共有にすることもあります。

売却を予定しているからといって、必ず相続人全員の共有名義にする必要はありません。最終的な売却方法や代金の分け方も踏まえ、誰の名義にするかを決めます。

ただし、一人の名義にした後で売却代金を他の相続人へ分ける設計は、遺産分割の内容や税務上の扱いに注意が必要です。協議書へどのように記載するかを含め、司法書士や税理士へ確認します。



相続登記前に売買契約を結ぶ場合の注意点


相続登記前でも、相続関係と売却の合意が明確で、登記完了の見通しが立っている場合には、相続登記の完了を条件として売買契約を先に結ぶ方法が検討されることがあります。

ただし、すべてのケースで安全に進められるわけではありません。少なくとも次の点を確認します。

  • 相続人の範囲が戸籍で確定している

  • 遺言書の有無と内容を確認している

  • 不動産を取得する人が決まっている

  • 売却について必要な相続人の合意がある

  • 相続登記に必要な書類がそろう見込みがある

  • 相続登記を完了する期限を契約上明確にする

  • 登記できなかった場合の解除・手付金返還などを定める

  • 買主側の金融機関や司法書士の確認が取れている

相続人が確定していない、遺産分割協議が終わっていない、相続人の一人と連絡が取れないなどの場合は、売却できると断定して契約するのは危険です。


「相続人全員で契約すればよい」とは限らない

遺産分割前の不動産について相続人全員が売却を希望していても、契約当事者の表示、相続登記の方法、売却代金の受取方法を整理する必要があります。

さらに、相続人に未成年者、認知症などにより意思能力が問題となる人、行方不明者がいる場合は、特別代理人、成年後見制度、不在者財産管理人などの手続きが必要になることがあります。

売却期限を先に約束すると、これらの手続きが間に合わず、契約違反となる可能性があります。相続関係に問題がある場合は、契約より前に司法書士や弁護士へ確認します。



故人名義の不動産を売却するまでの流れ


故人名義の不動産は、次の順番で進めると、相続登記と売却準備を並行できます。


1.登記事項証明書と固定資産税資料を確認する

まず、土地・建物の登記事項証明書を取得し、現在の名義、共有者、抵当権などを確認します。固定資産税の課税明細や名寄帳も確認し、自宅敷地以外の土地、私道持分、未登記建物などがないかを調べます。


2.遺言書と相続人を確認する

遺言書がある場合は、不動産を誰が取得する内容かを確認します。

遺言書がない場合は、戸籍を集めて相続人を確定します。親子だけの相続と思っていても、前婚の子や代襲相続人がいることがあります。


3.不動産を取得する人と売却方針を決める

相続人間で、売る・残す・貸すの方針を話し合います。売却する場合は、誰が不動産を取得して売主になるか、売却代金をどのように分けるかを整理します。

遺産分割協議の内容は、登記だけでなく税務にも影響する可能性があるため、安易に共有名義へせず確認します。


4.査定と物件調査を進める

相続登記の準備中でも、査定や現地調査は進められます。

土地・戸建てでは境界、接道、越境、建物の状態、残置物、未登記部分を確認します。賃貸中の場合は、契約書、賃料、敷金、滞納状況などを整理します。


5.相続登記を申請する

遺言書または遺産分割協議の内容に基づき、故人から相続人へ所有権移転登記を申請します。相続登記が完了すると、原則として新しい名義人へ登記識別情報が通知されます。買主への所有権移転登記で使用するため、安全に保管します。



6.売買契約、決済、引渡しを行う

相続登記が完了し、売主と登記名義人が一致していることを確認したうえで、買主への所有権移転を行います。

売買代金の受領、抵当権の抹消、鍵や関係書類の引渡しも同日に行うことが一般的です。



相続登記を先に進められないケース


相続登記が終わっていない理由によって、必要な対応は異なります。

遺産分割協議が終わっていない

遺言書がなく、不動産を取得する人が決まっていない場合は、相続人全員で遺産分割協議を行います。

売却自体には賛成していても、最低売却価格、費用負担、代金の分け方で意見が異なることがあります。登記名義だけ先に決めるのではなく、売却条件も併せて書面化します。

遺産分割協議が終わっていない不動産は売却できる?


相続人の一人と連絡が取れない

相続人の一人を除外して遺産分割協議を成立させることはできません。戸籍の附票などから住所を確認し、連絡を試みます。

所在が分からない場合は、不在者財産管理人の選任など、家庭裁判所の手続きが必要になる可能性があります。

相続人の一人と連絡が取れない不動産は売却できる?


祖父母や曾祖父母の名義になっている

名義人の死亡後にその相続人も亡くなっていると、相続が複数回発生した「数次相続」になっている可能性があります。

現在の相続人が多数になることがあり、古い戸籍の収集や複数段階の遺産分割が必要です。売却時期を先に決めず、相続関係図を作って必要な手続きを把握します。

祖父名義のまま残っている不動産を売却するには?


遺言書の内容や有効性に問題がある

不動産の表示が不正確、遺言後に分筆・合筆されている、複数の遺言書が見つかったなどの場合は、そのまま登記できるとは限りません。

遺言執行者の有無や検認の要否も確認し、司法書士や弁護士へ相談します。


相続人に未成年者・意思能力に問題のある人がいる

親と未成年の子の利害が対立する遺産分割では、特別代理人が必要になることがあります。認知症があるという理由だけで直ちに売却できないとは限りませんが、本人が契約内容を理解して意思表示できるかが重要です。

本人の意思能力が認められない場合は、成年後見制度などの検討が必要です。



相続人申告登記だけでは売却できない


相続人申告登記は、相続登記の申請義務を簡易に履行するための制度です。相続人が、登記名義人について相続が開始したことと、自分が相続人であることを法務局へ申し出ます。

しかし、相続人申告登記をしても、不動産を取得した相続人へ所有権が移転したことを示す登記にはなりません。そのため、相続人申告登記だけで買主へ所有権を移転することはできません。

売却するには、遺言や遺産分割などに基づいて不動産を取得する人を決め、通常の相続登記を行う必要があります。

制度

主な目的

売却の前提になるか

相続人申告登記

相続登記の申請義務を簡易に履行する

これだけでは売却できない

相続登記

不動産を取得した相続人を登記名義人にする

買主への所有権移転の前提になる



相続登記を急いだ方がよいケース


次のような場合は、査定と同時に相続登記の準備を始めます。


  • 購入希望者がいる、または売却期限が決まっている

  • 空き家の管理費や固定資産税の負担が続いている

  • 相続人が高齢で、次の相続が起きる可能性がある

  • 相続人が多い、または遠方に分散している

  • 祖父母など古い名義のままになっている

  • 遺産分割後、登記をせずに時間が経っている

  • 相続税や譲渡所得の特例に期限がある


2024年4月1日から相続登記は義務化されています。相続によって不動産を取得したことを知った日から3年以内に相続登記を申請する必要があり、遺産分割が成立した場合にも、その成立日から3年以内の申請が必要です。

正当な理由なく義務に違反した場合は、10万円以下の過料の対象となることがあります。義務化前に発生した相続も対象となるため、古い相続だから放置してよいわけではありません。

なお、この記事では義務化の詳しいリスクまでは扱わず、IS-008で詳しく解説します。

相続登記をしていない不動産を放置するとどうなる?



このような場合は、売買契約の前にご相談ください


  • 相続人が誰か分からない

  • 遺産分割協議が終わっていない

  • 相続人の一人が売却に反対している

  • 連絡が取れない相続人がいる

  • 祖父母など数代前の名義になっている

  • 相続人に未成年者や認知症の人がいる

  • 遺言書の内容と現在の不動産が一致しない

  • 未登記建物、境界、私道、越境など別の問題もある


相続登記に時間がかかる場合でも、物件調査や売却方法の検討を並行できることがあります。先に契約期限を決めるのではなく、相続手続きと物件側の問題を一緒に整理することが重要です。







故人名義の不動産売却についてよくある質問


相続登記が終わる前でも査定を依頼できますか?

はい。所在地や固定資産税の課税明細など、不動産を特定できる情報があれば相談できます。

ただし、査定と並行して、遺言書、戸籍、遺産分割の状況を確認します。査定額が出ても、売主が確定しなければ引渡しはできません。

相続した実家の査定はいつ依頼する?登記前でも相談できる?

相続人や遺産分割の状況、不動産会社の確認方法によって異なります。相続人全員の売却意思や、不動産を取得して売主となる人を確認したうえで進める必要があります。

媒介契約を結べることと、買主へ所有権を移転できることは別です。売買契約や決済までに相続登記を完了できる予定を立てます。


相続人が一人でも、故人名義から買主名義へ直接移転するのではなく、先に相続人への相続登記が必要です。

相続人が一人であることを戸籍で確認し、必要書類をそろえて相続登記を申請します。

売却に賛成しているだけでは、故人名義のまま買主へ所有権を移せません。誰が不動産を取得するかを決め、相続登記を行う必要があります。

登記前に売買契約を検討する場合も、相続人の確定、遺産分割、登記期限、登記できなかった場合の扱いを契約前に整理します。

相続人申告登記だけでは売却できません。この制度は申請義務を簡易に履行するためのもので、不動産を取得した相続人への所有権移転登記ではないためです。

買主へ所有権を移す前に、通常の相続登記が必要です。

法務局へ申請した後の処理期間だけでなく、戸籍収集、遺言書の確認、遺産分割協議に要する期間によって大きく変わります。

相続人が少なく、協議がまとまっている場合と、数次相続や連絡不能の相続人がいる場合では期間が異なります。売却期限がある場合は、先に司法書士へ見通しを確認します。

登録免許税や司法書士報酬は、相続登記を申請する段階で支払いが必要になるのが一般的です。そのため、売却代金を受け取る前に費用を準備する必要があります。

誰が一時的に負担し、売却後にどう精算するかを相続人間で決めておきます。



まとめ|登記と売却準備を並行して進める


相続した不動産が故人名義のままでも、査定、物件調査、必要書類の確認、売却方法の検討は始められます。

ただし、故人名義のまま買主へ所有権を移転することはできません。原則として、故人から不動産を取得する相続人への相続登記を済ませ、その相続人から買主へ所有権を移します。

売却を急ぐ場合ほど、相続登記が終わるのをただ待つのではなく、次の作業を並行して進めることが大切です。


  • 相続人と遺言書の確認

  • 不動産を取得する人と売却方針の決定

  • 戸籍など相続登記書類の収集

  • 査定、現地確認、売却条件の調査

  • 登記完了までのスケジュール確認


相続人が多い、祖父母名義のまま、連絡が取れない人がいる、物件自体にも問題があるといった場合は、売買契約を先行させず、相続と不動産の両面から手順を組み立てましょう。



公的情報・確認資料


本記事の制度・手続きに関する内容は、以下の公的機関の情報を基に確認しています。

※必要な登記や書類は、遺言、遺産分割、相続人の範囲などによって異なります。個別の登記申請は、管轄法務局または司法書士へご確認ください。



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