不動産を生前贈与するか相続させるか|判断前に整理したいこと
- 8月1日
- 読了時間: 8分

「元気なうちに自宅や土地を子どもへ渡した方がよいのか」「相続まで親名義のままにした方が税金は少ないのか」と迷う方は少なくありません。
しかし、贈与税と相続税の金額だけでは比較できません。登記費用、不動産取得税、親の居住、賃料の帰属、子どもの管理負担、将来売却するときの特例まで結果が変わります。
大切なのは、先に贈与する方法を決めるのではなく、不動産と家族全体の条件を整理してから比較することです。この記事では、判断前に確認したい税制と5つの比較視点を解説します。
生前贈与と相続は「所有権を移す時期」が違う
生前贈与では、親が生きている間に所有権を移します。登記後は原則として子どもが所有者となるため、固定資産税、管理、修繕、賃貸、将来の処分について親子の役割を明確にします。親が引き続き住む条件も確認が必要です。
相続では、親の死後に遺言や遺産分割協議などに基づいて取得者を決めます。親が所有権を保てる一方、相続人の意見が合わない、取得者が決まらないといった課題が残る可能性があります。
つまり、生前贈与は「早く渡せる」、相続は「親が所有権を保てる」という違いがあります。どちらがよいかは、早期移転の必要性と、親が持ち続ける必要性のどちらが大きいかで変わります。
贈与税と相続税だけで決めない
暦年課税の贈与税には年110万円の基礎控除があります。ただし、不動産持分を少しずつ贈与する場合も、毎年の評価、登記、共有化による管理の複雑さを確認します。
また、相続や遺贈により財産を取得する人が、被相続人から暦年課税による贈与を受けていた場合、一定期間内の贈与財産が相続税の課税価格へ加算される制度があります。2024年以後の贈与については加算対象期間が段階的に7年へ延長されます。「毎年110万円以内なら必ず相続税にも影響しない」とは限りません。
相続税は、預貯金、有価証券、保険、債務などを含む遺産全体と、相続人の人数・取得割合により変わります。不動産1件だけでなく、家族全体の税額を比較します。

税金以外に登記・取得時の費用も比べる
不動産の名義を移す際には、登録免許税や司法書士報酬などが必要です。所有権移転登記の登録免許税は、原則として相続が固定資産税評価額の1,000分の4、贈与が1,000分の20で、税率に差があります。相続登記には一定の土地を対象とする免税措置もあるため、対象になるか確認します。
さらに、不動産取得税は、相続による取得なら原則として非課税ですが、生前贈与は原則として課税対象です。相続時精算課税や夫婦間の居住用不動産の贈与特例を使って贈与税が抑えられても、不動産取得税が当然に非課税になるわけではありません。
贈与税がゼロという試算だけで実行せず、登録免許税、不動産取得税、専門家費用を含む初期費用を一覧にすることが重要です。
相続時精算課税は「贈与税がかからない制度」ではない
相続時精算課税は、一定の要件を満たす贈与者と受贈者が選択できる制度です。2024年以後は年110万円の基礎控除が設けられ、別に累計2,500万円の特別控除があります。特別控除後の残額には一律20%の贈与税がかかります。
ただし、特別控除を使った部分などは、原則として贈与者の相続時に贈与時の価額を相続財産へ加算して相続税を精算します。制度を選択した後は、その贈与者からの贈与について暦年課税へ戻せません。将来値上がりする不動産、収益を早く子へ移したい不動産などで検討されますが、選択前に税理士による試算が必要です。

生前贈与と相続を比べる5つの視点
制度名から先に選ばず、次の5つの視点で現在の条件を整理します。一つでも不明な点があれば、評価・査定・家族会議を先に行いましょう。
1.財産全体で税額を試算したか
対象不動産の相続税評価額、固定資産税評価額、実際の売却査定額を分けて確認します。そのうえで、預貯金などを含む相続財産全体、法定相続人、過去の贈与、適用できる控除・特例を税理士へ伝え、生前贈与と相続の双方を試算します。
2.今、所有権を移す必要があるか
子どもが建替えや賃貸経営を始める、収益を次世代へ移すなど、今すぐ所有権を渡す目的があるかを確認します。目的が曖昧なまま「認知症対策になるから」と贈与すると、親が自由に売却できなくなります。判断能力低下への備えには、贈与以外の制度もあるため、司法書士や弁護士へ相談します。
3.親の住まいと生活資金を守れるか
自宅を贈与した後も親が住み続けるなら、居住期間、修繕費、建替え、売却を誰が決めるかを明確にします。賃貸不動産を贈与すれば、その後の賃料は原則として新しい所有者に帰属するため、親の生活資金が不足しないかも確認します。
4.子どもが今から管理・費用負担を引き受けられるか
所有権を受け取れば、税金、保険、修繕、管理、近隣対応なども始まります。子どもが遠方に住んでいる、兄弟姉妹との公平を調整できない、建物の大規模修繕が近い場合は、早く渡すことが負担になる可能性があります。子どもの受取意思も改めて確認します。
5.近い将来に売却する可能性があるか
取得後に売却する可能性があるなら、譲渡所得まで比較します。相続税を納めた人が一定期間内に相続財産を売却した場合、相続税額の一部を取得費へ加算できる特例があります。また、相続した空き家の3,000万円特別控除など、相続取得を前提とする制度もあります。
適用要件は細かく、ほかの特例と併用できない場合があります。「いずれ売る予定なのに、先に贈与したため利用できない」ということがないよう、贈与前に売却時の税額も税理士へ確認します。

生前贈与が検討候補になりやすいケース
子どもがすぐに利用・管理する明確な目的がある
収益不動産の管理と収入を早期に次世代へ移したい
親の住まいと生活資金を別に確保できている
贈与税、相続税、登記費用、不動産取得税を含めて試算済みである
ほかの相続人との公平や遺留分への対応を検討している
反対に、親が住み続ける条件が未整理、子どもが受取りを迷っている、修繕や権利問題が残る、将来売却する可能性が高い場合は、急いで贈与せず、相続まで保有する方法や先に売却して現金を整理する方法も比較します。
実行前にそろえたい資料
固定資産税納税通知書・評価証明書
登記事項証明書、公図、測量図、建築関係資料
賃貸借契約書、年間収支、修繕履歴
住宅ローンや抵当権などの残高・権利資料
預貯金、有価証券、保険、債務を含む財産一覧
過去の贈与と贈与税申告の記録
親の今後の居住方針と生活資金の見通し
税理士は税額、司法書士は贈与契約や登記、不動産会社は実勢価格・収益・売却条件を確認します。一人の専門家だけで判断せず、それぞれの数字を同じ前提にそろえることが大切です。
よくある質問
毎年110万円分ずつ不動産の持分を贈与すれば得ですか?
一概にはいえません。毎年の評価と登記費用、共有持分の増加、相続開始前贈与の加算、将来の売却手続を確認する必要があります。現金と違い、不動産持分は管理や処分が複雑になるため、実行前に総費用を比較します。
相続時精算課税で2,500万円まで非課税になりますか?
贈与時の特別控除であり、単純な完全非課税枠ではありません。特別控除を使った価額は、原則として贈与者の相続時に相続財産へ加算して精算します。選択後に暦年課税へ戻せない点にも注意が必要です。
自宅を子どもへ贈与しても、そのまま住めますか?
親子の合意により住み続けることは考えられますが、所有者は子どもになります。居住期間、税金、修繕、売却・担保設定の扱いを事前に決め、契約や登記の要否を司法書士・弁護士へ確認してください。
不動産だけ先に贈与すれば相続争いを防げますか?
必ず防げるわけではありません。ほかの財産との公平、特別受益、遺留分、贈与時の意思能力などが問題になることがあります。家族全体の分け方と本人の意思を記録し、弁護士・司法書士へ確認します。
まとめ|税額だけでなく、渡した後まで比較する
不動産を生前贈与するか相続させるかは、贈与税・相続税、登録免許税、不動産取得税、所有権を移す時期、親の生活、子どもの管理負担、将来の売却を一つの表にして比較します。
さくら都市デザインでは、贈与や相続の方法を決める前に、不動産の現況、実勢価格、権利・建物上の課題、保有・売却の選択肢を整理できます。税務・登記の専門家へ相談するための前提資料をそろえたい段階でもご相談ください。
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参考情報
※本記事は一般的な比較項目を示すもので、個別の節税効果や適用可否を保証するものではありません。税務は税理士、贈与契約・遺言・登記・遺留分等は司法書士または弁護士へご確認ください。




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