子どもに不動産を残す前に確認したい「本当に欲しいか」という問題
- 8月1日
- 読了時間: 7分

「この家は価値があるから、子どもに残したい」「売らずに持っていれば、いつか役に立つはず」と考える親御さんは少なくありません。しかし、子どもが同じ不動産を本当に欲しいとは限りません。
すでに自宅を購入している、遠方に住んでいる、仕事や育児で管理できない、兄弟姉妹との共有は避けたいなど、子ども側にも事情があります。資産価値があっても、固定資産税、修繕、草木、家財、近隣対応を負担し続けるなら、承継が重荷になることもあります。
大切なのは、親が一方的に残す方法を決めるのではなく、子どもの受取意思と、引き継いだ後の現実を生前に確認することです。この記事では、「本当に欲しいか」を確かめるための6項目と、希望が合わない場合の整理方法を解説します。
「価値がある」と「子どもが欲しい」は別の問題
不動産には、金銭的な価値だけでなく、親が建てた家、先祖から受け継いだ土地、家族の思い出といった感情的な価値があります。一方、子どもが判断するときは、現在の生活、勤務地、配偶者の意向、維持費、管理時間、将来の売りやすさが基準になります。
また、固定資産税評価額や相続税評価額と、実際に売却できる価格は同じではありません。接道、借地、共有、境界、老朽化、賃貸借などの条件によっては、評価額があっても買主が限られます。「高く評価されているから残すべき」と決めず、査定価格と保有負担を分けて確認します。
最初に「欲しい・いらない」と即答を求めない
子どもに「この家は欲しい?」とだけ聞くと、親への遠慮から「残しておいて」と答えたり、詳しい状況を知らないまま「いらない」と答えたりする可能性があります。最初は結論を求めず、物件の状態と負担を共有することが先です。
所在地、名義、利用者、年間収支、修繕履歴、住宅ローン、境界・道路、残置物などを整理し、現地も一度確認します。そのうえで「住むか」「貸せるか」「誰が管理するか」「毎年いくら必要か」「将来売れるか」を具体的に話し合います。

子どもと確認したい6項
「欲しい」という言葉だけで承継を決めず、次の6項目を一つずつ確認します。分からない項目は、査定や現地調査を行ってから再度話し合えば問題ありません。
1.自分や家族が使う予定
子ども本人が住む、建て替える、事業に使う、子ども世代へ残すなど、具体的な利用予定があるかを確認します。「いつか使うかもしれない」だけでは、長期間空き家になる可能性があります。利用開始の時期と、それまでの管理方法も決めておきましょう。
2.貸す場合の収益性と実務
賃貸を希望するなら、想定賃料だけでなく、修繕、募集、管理委託、空室、税金を差し引いた収支を確認します。古い戸建てやアパートは、入居前にまとまった工事費が必要なこともあります。貸せるかどうかを、周辺相場と建物状態から現実的に判断します。
3.管理の手間と距離
空き家でも、郵便物、換気、通水、庭木、害虫、災害、近隣からの連絡などへの対応が必要です。遠方に住む子どもが毎月通うのか、管理会社へ頼むのか、費用を誰が払うのかまで確認します。適切に管理されない空き家は、周囲へ損害を与えた場合に所有者の責任が問題になる可能性もあります。
4.年間の維持費と将来費用
固定資産税・都市計画税、保険、管理費、修繕積立金、草木や清掃の費用を一覧にします。さらに、屋根・外壁・給排水設備の修繕、家財処分、解体、測量など、将来発生しそうな費用も概算します。子どもが自分の生活費から無理なく負担できるかが重要です。
5.兄弟姉妹との公平と共有リスク
一人が不動産を取得するなら、ほかの相続人へ渡す預貯金や代償金を確保できるか確認します。公平にするため不動産を共有すると、将来の売却や大規模修繕で共有者間の調整が必要になります。共有持分の特徴も踏まえ、取得する人、管理する人、費用を負担する人を曖昧にしないことが大切です。
6.将来売却・整理できる状態か
子どもが今は保有したいと考えていても、転勤、介護、資金需要などで将来売却する可能性があります。境界、接道、私道、未登記建物、借地・底地、共有者、賃借人など、処分を難しくする条件がないか確認します。問題があれば親の代で解決するのか、必要書類と相談先だけ整えて引き継ぐのかを決めます。

子どもが「いらない」と言った場合の4つの選択肢
1.親が元気なうちに売却する
親本人が売却条件を判断できるうちに現金化すれば、老後資金や住み替え資金として使え、子どもの管理負担も減らせます。ただし、現在の住まいを失わないよう、売却時期と転居先を先に検討します。
2.一定期間貸してから方針を見直す
すぐに売らず、賃貸の収支と管理体制を確認したうえで貸す方法です。ただし、貸せば自由に返してもらえるとは限らず、修繕や契約管理も発生します。「とりあえず賃貸」にせず、保有期間と見直し時期を決めます。
3.権利・建物・書類を整理してから残す
子どもが取得自体を拒んでいるのではなく、問題のある状態で受け取りたくない場合もあります。名義、共有、境界、残置物、未登記、古い契約書などを整理すると、承継後の負担を減らせます。費用をかけて解決する価値があるかは、売却査定と比較して判断します。
4.複数の不動産や預貯金を含めて分け方を考える
自宅、賃貸物件、土地、預貯金を一つずつ別々に考えるのではなく、財産全体で承継方法を検討します。不動産を欲しい子と現金を希望する子がいれば、分け方の選択肢が増えます。遺言、贈与、相続税、遺留分に関わる判断は、司法書士・弁護士・税理士へ確認してください。

話し合いは一度で決めず、定期的に見直す
親子の希望は変わります。子どもの転居や住宅購入、親の健康状態、建物の老朽化、不動産市況によって、以前は欲しかった物件が不要になったり、逆に活用方法が見つかったりします。家族会議の内容は「現時点の意向」として記録し、年に一度や大きな生活変化の際に見直します。
家族のメモだけで、相続方法や売却権限が法的に確定するわけではありません。具体的な承継方法を実行する場合は、本人の意思を確認し、必要に応じて専門家へ相談します。
よくある質問
子どもが「どちらでもよい」と言う場合はどうしますか?
物件情報と負担を知らないため判断できない可能性があります。査定価格、年間維持費、必要修繕、賃貸収支、管理頻度を示し、「住む」「貸す」「保有する」「売る」のどれなら対応できるかを聞きます。
子どもが欲しくない不動産を、遺言で残してもよいですか?
遺言の内容や相続放棄、ほかの遺産との関係など、個別の法的判断が必要です。受け取る側の意向を無視すると、相続後の紛争や管理放置につながるため、作成前に子どもと話し合い、弁護士や司法書士へ確認してください。
相続税評価額が高ければ、子どもに残す方が得ですか?
一概にはいえません。相続税評価額、実際の売却価格、税額、維持費、将来の修繕費は別の数字です。税務は税理士、実勢価格と売却条件は不動産会社へ確認し、手取りと負担を比較します。
親が認知症になってからでも売却できますか?
本人の判断能力が不十分な場合、家族が当然に代理して売却できるわけではありません。成年後見制度などが関係する場合がありますが、権限や手続きは個別事情で異なります。親が自分で意思を示せるうちに方針を整理し、司法書士や弁護士へ相談します。
まとめ|残したい気持ちと、受け取る側の現実を両方確認する
子どもに不動産を残す前に、利用予定、賃貸の収益性、管理の手間、維持費、兄弟姉妹との公平、将来の処分可能性を確認します。親にとって大切な不動産でも、子どもが無理なく管理・負担できなければ、資産ではなく課題を残すことになりかねません。
さくら都市デザインでは、売却を決めていない段階でも、現況の価格と課題、保有・賃貸・売却・権利調整の選択肢を整理できます。親子だけでは判断材料をそろえにくい場合は、現在の状態から確認しましょう。
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生前の確認事項や、相続後に残す・売るを判断する基準は、次の記事もあわせてご確認ください。
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参考情報
※不動産の状態、家族構成、本人の判断能力、相続税・贈与税によって適した方法は異なります。登記・法律は司法書士または弁護士、税務は税理士、境界は土地家屋調査士へご確認ください。




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