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数十社の提案を断ってきた地主が5件の底地を売却|借地人ごとに異なる方法で整理した事例

9月8日
読了時間: 9分

相続した複数の底地を、借地人ごとの事情に合わせて整理した事例

東京都品川区にある複数の底地について、相続した地主から売却のご相談を受けました。

対象は全部で5件。土地の大きさは約15坪〜40坪で、4件は戸建住宅、1件は自宅兼飲食店として利用されていました。

地主は50代の男性で、相続後も管理会社を通して地代を受け取っていましたが、自分で自由に使える土地ではなく、資産としての使い勝手に課題を感じていました。

そのため、希望する価格で売却できるのであれば現金化し、将来的には別の不動産への資産組み換えも検討したいという意向でした。

ただし、当社へ相談いただいた時点ですでに数十社から提案を受けていました。

これまで売却しなかった理由は、価格だけではありません。

地主は営業担当者から聞いた内容を細かくメモし、その後自分でも調べるタイプの方でした。根拠の薄い営業トークや、勢いで契約を進めるような提案を好まず、説明に納得できない会社とは取引をしていませんでした。

そのため、最初から5件すべてを任せてもらったわけではありません。

まずは1件の底地から調整を始め、進捗や借地人との協議内容を報告しながら進めました。その過程で少しずつ信頼していただき、1件目の途中から2件目、3件目と追加で任せてもらうようになり、最終的には5件すべてを整理しています。


所在地

東京都品川区

地主

50代男性

取得経緯

相続

底地

5件

土地面積

約15坪〜40坪

利用状況

戸建4件、自宅兼飲食店1件

借地人

5世帯

地代水準

おおむね周辺相場程度

地主の希望

希望水準で売却し、将来の資産組み換えを検討

最終結果

4世帯が底地を購入、1世帯は借地権を売却

期間

早い案件で約4か月、最長で約2年半


数十社の提案を断り、まずは1件から開始

最初の接点は電話営業でした。

地主はそれ以前にも複数の不動産会社から底地の売却提案を受けており、数十社と話をしていました。

それでも売却に至らなかったのは、提示された価格が希望に届かなかったことに加え、営業担当者の説明や進め方に納得できなかったためです。

地主は、担当者が話した内容をその場でメモし、後から自分でも確認する方でした。

「底地だからこの価格です」「今売らないと難しくなります」といった説明だけでは判断しません。

そのため今回も、最初からすべてを任せてもらうのではなく、まず1件について借地人との調整を進めることになりました。

実際にどのように話を進めるのか、どの程度の頻度で報告があるのか、提示された条件に根拠があるのか。そうした部分を見てもらいながら取引を進めました。


相続していても、借地人5世帯の状況はほとんど分からなかった

5件の土地は近隣にありましたが、すべてが隣接しているわけではありません。同じ街区にあるものもあれば、丁目が異なるものもありました。

地主自身が借地人と直接やり取りしていたわけではなく、管理会社が間に入っていたため、5世帯それぞれの生活状況や今後の意向はほとんど把握していませんでした。

また、地主の手元には借地契約書もありませんでした。

そこで、管理会社や借地人への確認を行いながら、1件ずつ状況を整理していきました。

実際に確認すると、同じ「底地」でも状況は大きく異なります。

古い戸建もあれば、今後リフォームを考えている住宅もあり、自宅と飲食店を兼ねている物件もありました。

地主側から見ると5件とも同じ底地ですが、借地人側にとってはそれぞれ生活の場であり、資金状況も将来の予定も異なります。

そのため、5件すべてに同じ売却方法を当てはめるのではなく、借地人ごとに出口を考えることにしました。


3世帯は、それぞれの事情に合わせて底地を購入

5世帯のうち3世帯については、最終的に借地人自身が底地を購入しました。

ただし、購入に至る背景や資金計画はそれぞれ異なります。

ある世帯では、高齢の夫婦が今後も現在の家に住み続ける意向があり、近くに住む家族とも相談したうえで現金で底地を購入しました。

別の世帯では親子で暮らしており、家族の一人が融資を利用して購入しています。融資を利用する場合には金融機関側の指定や条件もあるため、それらを確認しながら売買条件や手続きを調整しました。

もう一つの世帯では、現在は母親が住んでいましたが、近くに住む娘夫婦と子どもたちが、今後一緒に暮らすことを考えていました。

建物についてもリフォームを予定していたため、底地の購入費用とリフォーム費用を合わせると負担は大きくなります。

それでも今後の生活を考えれば土地も取得しておきたいという意向があり、資金計画を整理したうえで融資を利用して底地を購入することになりました。

同じ「借地人による底地購入」でも、現金で購入する世帯もあれば、今後の住まい方やリフォームまで考えて融資を利用する世帯もあります。

地主側から見れば同じ底地売却でも、借地人側では一件ごとに異なる判断が必要でした。


2年間価格がまとまらなかった自宅兼飲食店

5件の中で特に印象に残っている一つが、自宅兼飲食店として利用されていた物件です。

当社が関わる前から、管理会社と借地人との間で底地売買の話が進められていました。

しかし、地主側と借地人側の希望価格に差があり、約2年間話がまとまらない状態が続いていました。

借地人にとっては、単なる住宅ではありません。そこで生活しながら飲食店も営業しているため、今後も事業を続ける前提で考える必要があります。

当社が入った後は、借地人と数回打ち合わせを行い、希望する価格だけでなく、資金計画も含めて条件を整理しました。

その中で銀行融資を利用して購入する方向が見えてきたため、金融機関側の条件も確認しながら、地主・借地人双方が合意できる水準まで価格を調整しました。

約2年間動かなかった話でしたが、当社が入ってからは4〜5か月程度で売買にまとまっています。

長期間交渉していた案件でも、単純に「どちらかが譲ればよい」という話ではありません。

双方が何を前提にその価格を希望しているのか、購入資金をどう用意するのかまで整理し直すことで、止まっていた話が動き出すことがあります。


複数の底地は、借地人ごとに整理方法が変わります

同じ地主が所有する底地でも、借地人側の事情は一件ずつ異なります。

今後も住み続けたい世帯、融資を使って土地を買いたい世帯、リフォームも同時に考えている世帯、店舗を続けながら購入したい世帯など、状況はさまざまです。

そのため、複数の底地をまとめて整理したい場合でも、すべてに同じ条件を当てはめるとは限りません。借地人の利用状況や資金計画まで確認することで、現実的な売却方法が見えてくることがあります。


底地購入を待った末、借地権売却へ方針転換

もう一つ、最も時間がかかったのが、母親と長男が暮らしていた世帯です。

ほかの子どもたちはすでに独立しており、家には母親と長男が住んでいました。

当初、この世帯も底地を購入する予定でした。

しかし、長男が転職したばかりだったこともあり、融資を受けることができませんでした。

すぐに売却へ切り替えたわけではなく、将来的に融資を利用できる可能性も考えながら、しばらく待つことになりました。その間も何度か打ち合わせを行っています。

時間をかけて話をする中で、底地購入とは別の問題も見えてきました。

建物が古く、今後住み続けるにはリフォームや建替えにも相応の費用がかかります。

底地を購入するための資金を用意したうえで、さらに建物にも大きな費用をかける。その選択が本当に家族にとって良いのかを改めて考えることになりました。

当初は「土地を買いたい」という話から始まりましたが、打ち合わせを重ねる中で、最終的には借地権を売却して住み替える方向へ考え方が変わっていきました。

そこで当社が底地と借地権をそれぞれ取得し、権利関係を一本化したうえで、所有権の土地として戸建会社へ売却しています。

この案件は約2年半かかりました。

時間はかかりましたが、当初考えていた底地購入だけにこだわらず、建物の将来負担や家族の生活まで考えたことで、最終的には別の出口を選ぶことができました。



1件目の途中から、2件目・3件目も任されるように

地主から最初に任されたのは1件だけでした。

その案件について、借地人との打ち合わせ内容や価格調整の状況をその都度報告しながら進めました。

1件目が完全に終わる前から、地主から別の土地についても相談を受けるようになり、2件目、3件目と少しずつ対象が増えていきました。

最終的には5件すべてを当社で整理しています。

もともと数十社から提案を受けても取引しなかった地主です。

そのため、「信頼してください」と言葉で伝えるよりも、実際の進め方や報告内容を見てもらい、一つずつ結果を積み重ねることが重要でした。

最終的には5件すべてについて、地主が希望していた水準で売却することができました。


底地を現金化し、次の資産活用を検討

地主は、底地を売却して得た資金を、将来的に別の不動産へ組み換えることも考えていました。

ただし、売却後すぐに次の不動産を購入する必要があったわけではありません。

いくつか候補を探しながらも、条件に合わない物件を無理に購入することはせず、時間をかけて検討しています。

今回の目的は、資産組み換えそのものを急いで完了させることではなく、まず自由に使いにくかった複数の底地を、納得できる条件で現金化することでした。


この案件で大切だったこと

今回の5件は、すべて同じ地主が所有する底地でした。

しかし、借地人側の事情は一件ずつ違いました。

3世帯はそれぞれ異なる資金計画で底地を購入。自宅兼飲食店では、約2年間止まっていた価格交渉を改めて整理し、底地購入へ。残る1世帯では、当初の底地購入から方針を変え、借地権を売却して住み替えることになりました。

地主側から見れば「5件の底地を売却する」という一つの目的ですが、借地人側まで見ると、出口は一つではありません。

また、今回の地主のように提案内容を細かく確認する方に対しては、営業トークで判断を急がせるのではなく、事実を確認しながら進捗と条件を説明し続けることも重要でした。

複数の底地を整理するときは、すべてを一律に処理するのではなく、借地人ごとの事情に合わせて出口を考えることで、地主・借地人双方が納得できる結果につながることがあります。


厄介不動産の整理事例を書籍でも紹介しています


書籍『自分の不動産が“厄介”になった時に読む本』では、底地・借地権、相続、共有不動産、私道など、一般的な不動産売却とは異なる調整が必要なケースについて、さまざまな事例を交えながら整理の考え方を紹介しています。

底地は、価格だけでなく借地人の生活状況や将来意向によっても、整理方法が変わる不動産です。





複数の底地を相続し、整理方法に迷っている方へ

「隣接する土地も含めて整理できないか知りたい」

「借地上の建物が空き家になっている」

このような場合、土地や権利を個別に売却する以外の方法が考えられることがあります。

底地、借地権、隣接地などの状況を確認しながら、一体で整理できる可能性があるかをご相談いただけます。





 
 
 

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