突然の底地売却に借地人が弁護士へ相談|話し合いの末、借地人が土地を購入した事例

相続した底地を整理したい地主と、突然の話に戸惑う借地人
千葉県市川市にある約20~25坪の底地について、70代の地主様から売却のご相談を受けました。
地主様は神奈川県内に住んでおり、この土地に住んだ経験はなく、借地人との付き合いもほとんどありません。相続後は、通帳に入る地代を確認しながら税金を支払う程度の管理が続いていました。
地代は市川市ではおおむね一般的な水準だったものの、税金を差し引くと手元に残る金額はそれほど多くありません。自分で使う予定もなく、特別な思い入れがある土地でもないことから、「このまま持ち続けるより、売却して整理した方がよいのではないか」と考えるようになりました。
一方の借地人は60代のご夫婦で、借地権も先代から相続したものです。現在の借地人になってから約40年が経過しており、今は都内のマンションを生活の拠点としながら、市川市の家を週末に利用していました。
最終的には、この借地人自身が底地を現金で購入しています。ただし、最初から購入する方向で話が進んだわけではありません。突然の売却話を受けた借地人が専門家へ相談し、その後は弁護士を介して条件を確認しながら、売買価格を調整していくことになりました。
所在地 | 千葉県市川市 |
土地 | 約20~25坪 |
地主 | 70代・男性 |
借地人 | 60代夫婦 |
借地期間 | 現借地人になってから約40年 |
利用状況 | 都内在住、市川市の家は週末利用 |
最終的な整理 | 借地人が底地を現金で購入 |
協議期間 | 借地人との話し合い開始から約7か月 |
売却経緯|相続後、借地人との接点がほとんどない底地を整理
地主様は底地を相続していましたが、借地人と直接やり取りをする機会はほとんどなく、日常的な付き合いもありませんでした。
毎月地代は入ってくるものの、税金を差し引けば大きな収益になるわけではありません。自分で利用する予定もないため、将来までこのまま持ち続ける必要があるのかを考え、売却する方向で整理を進めることになりました。
ただ、最初の課題は借地人へどのように話を伝えるかという点です。地主様は借地人の現在の連絡先を把握していなかったため、登記上の住所を確認し、まずは都内のマンションへご挨拶にうかがいました。
最初の訪問では不在だったため、名刺と手紙を投函。その後あらためて訪問したものの、このときも会うことはできませんでした。市川市の借地上建物にも同じ内容の手紙を入れ、それでも連絡がなかったため、後日あらためて郵送で手紙を送付。しばらくして、ようやく借地人から連絡が入りました。
借地人への連絡と初回面談
借地人からは、「まず、どのような会社なのか見てから話を聞きたい」とのことで、ご夫婦に当社まで来社していただきました。
面談では、地主様が底地の売却を考えていること、その背景や今後考えられる方法について説明しました。借地人にとっては、それまでほとんど接点のなかった地主側から突然出てきた話で、その場ですぐに売る・買うを決められる内容ではありません。
借地人からも、「自分たちだけでは分からないので、相談している人に確認してから回答したい」という話がありました。この時点では誰に相談するのかまでは分かりませんでしたが、当社としてもその日のうちに結論を求めるつもりはなく、まずは地主様の意向をお伝えし、一度持ち帰って検討していただくことになりました。
弁護士を介した協議へ移行
その後、借地人本人ではなく弁護士から連絡が入り、借地人の代理人として今後の話を進めたいとの意向が示されました。
当初は慎重な反応で、現時点では底地を買うつもりも、借地権を売るつもりもないというところから協議が始まりました。
一方、話を進めていく中で、市川市の家については今後も残したいという借地人の意向が明確になってきました。現在の生活の中心は都内ですが、市川市の家も週末には利用しており、利用頻度が少ないからといって売却したい不動産ではありません。
そこで、借地権と底地をまとめて売却する方法だけに絞らず、借地人自身が底地を購入する方法も含めて検討することになりました。
相続した底地の整理方法が決まっていない段階でもご相談いただけます
「借地人とほとんど面識がない」「地代は入るものの、税金を払うとあまり残らない」「借地人へどのように売却の話を伝えればよいか分からない」といった段階でも、最初から売却方法を一つに決める必要はありません。
底地だけを売る方法、借地人に購入してもらう方法、借地権と合わせて整理する方法など、現在の利用状況や双方の意向を確認しながら検討できます。
借地人の意向を踏まえ、底地購入の方向へ
市川市の家は日常的に住んでいる住宅ではなかったため、当社からは借地権と底地を一緒に整理し、まとめて売却する方法も一つの選択肢として提示しました。
しかし、借地人には今後もこの家を利用したいという意向があります。現在も週末には戻っており、生活の中心が都内へ移ったからといって、手放したいわけではありません。
そうであれば、借地権を売却するよりも、自分たちで底地を購入し、土地と建物を一体の所有にする方が希望に合います。こうして、協議の方向は借地人による底地購入へと変わっていきました。

売買価格の調整と合意
購入する方向が見えても、すぐに契約まで進んだわけではありません。地主様には売却する以上納得できる価格があり、借地人にも購入する立場として受け入れられる金額があります。
双方の希望には差があり、当初の条件では折り合いませんでした。そこで、借地人側の弁護士から示された意向や価格感も踏まえながら、当社として事前に地主様と整理していた条件の範囲内で、複数回にわたって提案内容を調整しています。
どちらか一方の希望に合わせるのではなく、双方が受け入れられる着地点を探りながら条件を詰めていき、最終的には両者の主張の中間に近い水準で合意。借地人が現金で底地を購入することになりました。
弁護士を介した協議で意向を整理
「借地人が弁護士へ相談した」と聞くと、トラブルになったように感じる方もいるかもしれません。
今回については、そういうケースではありません。借地人にとっては突然出てきた底地の売却話であり、自分たちだけで判断せず、専門家に確認しながら進めたいと考えるのは自然なことです。
弁護士が入った後は、借地人が何を希望しているのか、価格についてどのように考えているのかも整理されていきました。協議には時間を要したものの、結果として借地人自身が納得したうえで、底地を購入する形にまとまっています。
約7か月の協議を経て借地人が購入
借地人との話し合いが始まってから、購入条件がまとまるまでは約7か月でした。
当初は突然の話に戸惑い、「今すぐ売るつもりも買うつもりもない」というところから始まっています。その後、現在の家の使い方や今後の希望を確認しながら複数の方法を検討した結果、借地人が選んだのは市川市の家を残すことでした。
最終的には底地を現金で購入し、これまで地主様が所有していた土地も借地人自身の所有となっています。
この案件で大切だったこと
今回の地主様と借地人は、関係が悪かったわけではなく、そもそも普段の接点がほとんどありませんでした。
地主様にとっては「利用予定がなく、収益も大きくない底地」であっても、借地人にとっては今後も利用したい家の土地です。同じ不動産でも、立場によって見え方は大きく変わります。
今回は借地人の意向を確認したことで、底地と借地権をまとめて売却するのではなく、借地人自身が土地を購入する方向へ整理できました。底地の売却では、価格だけでなく、借地人がその不動産を今後どうしたいのかまで確認することが、着地点を考えるうえで重要になるケースがあります。
厄介不動産の整理事例を書籍でも紹介しています

書籍『自分の不動産が“厄介”になった時に読む本』では、底地・借地、共有不動産、相続、私道など、一般的な不動産売却では進めにくいケースについて、さまざまな事例を交えながら整理の考え方を紹介しています。底地についても、本記事とは異なるケースを掲載しています。
相続した底地を持ち続けるべきか迷っている方へ
「相続したものの、自分では使う予定がない」
「借地人とはほとんど連絡を取ったことがない」
「地代は入るものの、税金を払うとあまり残らない」
このような底地では、借地人に購入してもらう方法、底地だけを売却する方法、借地権と合わせて整理する方法など、状況によって選択肢が変わります。
まだ売却すると決めていない段階でも、現在の権利関係や借地人との状況を確認しながら、整理方法をご相談いただけます。





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