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相続空き家の3,000万円特別控除|期限前に相談したのに間に合わなかった事例

9月11日
読了時間: 10分

3回忌を終えて売却を考え始めたものの、解体や測量などに必要な期間を考えると、特例の利用が現実的に難しかったケースです。



東京都台東区にある戸建住宅について、相続後しばらく空き家として残していた姉妹から売却のご相談を受けました。

土地は約20坪、建物は築50年弱。父親が亡くなり、娘である姉妹2人が相続した実家です。

相続当初から売却の話は出ていましたが、長く家族で暮らした実家だったこともあり、「すぐには手放したくない」「3回忌までは残しておきたい」という気持ちがありました。

父親の死後は、姉妹で室内を片付け、冷蔵庫の中身などを処分。写真や思い出の品、貴重品は持ち帰りましたが、家具や家電、衣類、収納内の荷物などは多く残したままでした。

3回忌を終えた頃から改めて売却を考えるようになりましたが、姉妹それぞれに家庭があり、実家までは電車で1時間少々。話し合いや準備は少しずつ後ろへずれ、実際に相談を受けたのは、特例の期限が近づいた秋から冬頃でした。

依頼者としては、「12月31日までならまだ間に合うのではないか」という認識がありました。


制度上の締切が12月31日でも、売却準備の締切はもっと前にあります。

今回の建物は築年数が古く、当時の制度では特例を使うために、売却前の解体なども含めて準備を進める必要がありました。残置物確認、解体業者の見積・手配、解体工事、確定測量、売買条件の調整などを逆算すると、期限内に売却まで完了させるのは現実的にかなり難しい状況でした。

さらに、特例に間に合わせることだけを優先して取引を急げば、売買価格や条件を妥協する可能性もあります。税負担を抑えるために不動産そのものを安く売ることになれば、本末転倒です。

そこで今回は、税務期限に無理に合わせるのではなく、姉妹が納得できる売却価格と、売却前の負担をできるだけ抑えることを優先して進めました。その結果、相談から引渡しまでは約4〜5か月となりました。


所在地

東京都台東区

物件

戸建住宅

土地面積

約20坪

築年数

約50年

相続人

姉妹2人

相続後の利用

空き家

売却を考え始めた時期

3回忌を終えた頃

相談時期

特例期限が近づいた秋〜冬頃

主な残置物

家具・家電・衣類・収納内の荷物など

売却方法

当社取得後、解体・確定測量を実施する前提で売却

売主側の事前負担

残置物処分・解体・測量の立替なし

相談から引渡し

約4〜5か月

税制

相続空き家の3,000万円特別控除は利用せず売却


相続直後は、実家をすぐに売る気持ちになれなかった

父親が亡くなった後、姉妹の間では実家を今後どうするかという話は出ていました。ただ、相続したからといって、すぐに売却する気持ちになれるとは限りません。

長く両親が暮らした実家だったため、まずは3回忌までは残しておきたいという考えがありました。

姉妹で室内を片付け、食品類や貴重品、写真などの思い出の品は整理しましたが、大きな家具や家電、衣類などはそのまま残しています。

当初は少しずつ片付けるつもりでしたが、ある程度整理が終わると、次第に実家へ行く回数も減っていきました。


1〜2年足が遠のき、郵便物や雑草が目立つように

姉妹の自宅から実家までは電車で1時間少々でした。

極端な遠方ではありませんが、往復と現地での作業を合わせれば半日程度かかります。それぞれに家庭もあるため、次第に足が遠のき、1〜2年ほどほとんど訪れない時期ができました。

久しぶりに確認した際には、ポストから郵便物がはみ出すほどたまり、庭の雑草も目立つ状態になっていました。

室内には食材などを残していなかったため異臭はなく、ある程度片付いていましたが、人が住んでいないため埃っぽさはありました。公共料金は止めていたものの、固定資産税は毎年かかります。

近隣から苦情を受けたことはありませんでしたが、後に境界確定の際に話をすると、「このまま空き家が続いて荒れていかないか気になっていた」という声もありました。



3回忌を終えて売却を考えたが、すぐには動けなかった

3回忌を終えた頃から、姉妹の中でも「そろそろ売却した方がよいのではないか」という話が具体的になりました。

姉が主な窓口となり、妹も姉の考えに大きく反対していたわけではありません。それでも、互いに家庭や予定があり、不動産について話す時間をつくることが後回しになっていきました。

家族仲が悪いわけでも、売却に反対する人がいるわけでもありません。それでも時間が経ってしまう。相続した実家では、このようなケースも少なくありません。


12月31日まで期限があっても、相談開始が遅いと間に合わない

相続した空き家については、一定の要件を満たす場合、譲渡所得から最高3,000万円を控除できる特例があります。

原則として、相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却することが必要です。

依頼者も制度自体は把握しており、「まだ12月31日前だから間に合うのではないか」と考えていました。

ただ、不動産売却では、期限の日までに相談を始めればよいわけではありません。

今回必要だったのは、残置物の最終確認、解体業者への見積依頼、工事日程の確保、建物解体、確定測量、売買条件の調整などです。解体も測量も、依頼した翌日に終わるものではありません。

相談時点では期限そのものは残っていたものの、実際の工程を逆算すると、期限内に売却まで完了させるのはかなり難しい状況でした。そのため、打ち合わせ段階で、特例の利用を前提にしたスケジュールは現実的に厳しいことを説明しました。


現在は売却後の解体でも対象になる場合があります

今回の事例は2024年より前の取引です。

その後、令和5年度税制改正により、2024年1月1日以後の譲渡については、一定の要件を満たせば、売却時点で耐震改修や建物の取壊しが完了していなくても、譲渡した年の翌年2月15日までに耐震改修または建物全部の取壊し等を行うことで特例の対象となる仕組みが設けられています。

また、特例の対象となる家屋には、昭和56年5月31日以前に建築されたことなど、他にも要件があります。

※実際に特例を利用できるかどうかは、相続時の状況、建物、売却方法、売却価格などによって異なります。税理士等への確認が必要です。



控除に間に合わせるために、売却価格を下げることは避けた

相談時点で、特例を利用できる可能性が完全になくなっていたわけではありません。

ただし、残された期間の中で解体や測量、契約までを急いで進めるには、日程を優先して業者を選んだり、短期間で買主を決めたりする必要が出てきます。

その結果、十分な条件調整ができず、売却価格を下げることになれば、税金を抑えるために不動産そのものを安く売ることになりかねません。

そこで今回は、3,000万円特別控除に無理に間に合わせることよりも、姉妹が納得できる価格と条件で売却することを優先しました。


「高く売りたい。でも売却前に大きな費用は出したくない」

姉妹の希望は、できるだけ高く売却することでした。一方で、売却前に解体費や測量費などのまとまった費用を自分たちで負担することは、できれば避けたいという意向もありました。

古い建物を解体し、確定測量を行ったうえで売却する方が、買主にとって条件が分かりやすくなり、価格面でも評価しやすくなることがあります。ただし、その場合は売主側が先に解体費や測量費を支払い、業者との打ち合わせや日程調整も行わなければなりません。

逆に、建物や残置物を残した現況のまま売却すると、売主の手間や先行負担は抑えられます。一方で、買主側には残置物処分や解体などの費用負担に加え、工事の手配や工期、活用を始めるまでの時間や手間が増えます。そのため、こうした負担を見込んで、売却価格が低くなる可能性があります。

そこで今回は、解体や確定測量などの費用を当社で負担し、引渡し前に当社側で解体・測量を進める方法を取りました。

姉妹には、売却前にまとまった費用を用意してもらう必要がありません。一方で、解体・測量後の状態を前提に価格を検討できたため、現況のまま売却する場合よりも高い条件を提示することができ、姉妹にも納得いただける売買価格で取引を進めることができました。



「仕方ない」と思う一方、姉妹でもう少し早く話していればという後悔

特例の利用が難しいことを伝えた際、依頼者には二つの気持ちがあったように思います。

一つは、3回忌までは実家を残したかったため、「仕方がなかった」という気持ち。

もう一つは、「姉妹でもう少し早く話し合っていれば、もっと早く相談できたかもしれない」という後悔です。

姉妹仲が悪かったわけでも、売却に反対する人がいたわけでもありません。それでも、日々の生活の中で実家について話すことが後回しになり、結果として相談時期も遅くなりました。

3回忌まで残した判断そのものを強く後悔していたわけではありません。一方で、税制上の期限と売却に必要な期間をもう少し早く確認していれば、別の選択肢が残っていた可能性があります。

3,000万円の控除が使えるかどうかによる実際の税額差は、取得費や譲渡費用などによって異なるため、一律に「いくら損をした」とは言えません。ただ、数千万円規模の不動産売却では、特例の適用可否が税負担に大きく影響する可能性があります。


税務期限を優先せず、売却条件を整えたため約4〜5か月

今回、相談から引渡しまでは約4〜5か月かかりました。ただし、これは「必ず4〜5か月必要だった」という意味ではありません。

期限に間に合わせることだけを優先すれば、買主探しや解体、測量などを急いで進め、もっと短い期間で取引できた可能性はあります。

しかし、急ぐことで売却価格を下げたり、条件を妥協したりするのであれば、本来の目的から外れてしまいます。

そこで今回は、税務期限よりも姉妹が納得できる価格と条件を優先し、そのうえで残置物の確認、解体、確定測量、契約条件の調整を進めました。その結果、引渡しまで約4〜5か月となりました。

税制上の期限と、不動産会社へ相談を始める期限は同じではありません。


売却を決めていなくても、期限と必要期間は確認しておく

相続した実家をすぐに売却する必要はありません。家族との思い出が残る家であれば、気持ちの整理に必要な時間も人それぞれです。

今回の姉妹が3回忌まで実家を残したいと思ったことも、不自然な判断ではありません。ただし、気持ちの整理と、税制上の期限は別に考えておく必要があります。

売却するかどうかをまだ決めていなくても、「特例はいつまで使えるのか」「売却するとしたら、どのくらいの期間が必要なのか」を先に確認することはできます。

物件によっては境界、解体、残置物、相続登記などで時間を要することがあります。そのため、特例を利用する可能性があり、将来的に売却する可能性もあるなら、期限直前ではなく、できれば半年程度の余裕を持って不動産会社や税理士へ相談しておく方が安心です。

相談したからといって、その場で売却を決める必要はありません。期限や必要な準備だけ把握したうえで、「今はまだ実家を残す」と判断することもできます。

当社でも、相続した実家について「もう少し早く相談しておけばよかった」という話を聞くことは一件や二件ではありません。気持ちも大切ですが、残された家族の資産も大切です。


相続不動産の整理事例を書籍でも紹介しています


書籍『自分の不動産が“厄介”になった時に読む本』では、相続した実家や空き家をはじめ、底地・借地権、共有不動産、私道など、判断や調整に時間がかかりやすい不動産について、事例を交えながら整理の考え方を紹介しています。

相続不動産では、物件そのものの問題だけでなく、家族の気持ち、税金、時間の経過などが最終的な判断に影響します。





一都三県で相続した実家・空き家の売却を検討している方へ

「実家を相続したが、まだ売る気持ちになれない」

「3回忌までは残しておきたい」

「空き家の3,000万円特別控除がいつまで使えるのか分からない」

「残置物や古い建物があり、売却まで何か月かかるのか分からない」

という場合でも、最初から売却を決める必要はありません。

ただし、期限のある制度や売却に必要な期間については、早めに確認できます。税金だけを優先するのではなく、売却価格、先行費用、手間まで含めて比較したうえで、実家をどうするか判断することが大切です。





 
 
 

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