誰も住まない借地上の実家に地代を払い続けた事例|相続した借地権を兄妹で整理

相続後も使われない実家に地代を払い続け、兄妹で将来を見直した事例
相続した実家が借地の上に建っている場合、誰も住んでいなくても地代の支払いは続きます。
今回ご相談を受けたのは、親から相続した借地上の実家を、兄と妹の2人で引き継いだケースです。
相続後、建物は約3年間ほぼ空き家の状態でした。兄も妹もすでに別の場所に自宅を持っており、今後この実家へ戻って住む予定もありません。
それでも妹には、「親が残した実家なので、できれば残しておきたい」という気持ちがありました。
一方、実際に地代を支払い続けていた兄は、誰も使っていない家のために毎月費用が発生する状態を負担に感じていました。
このまま借地権を持ち続ければ、今後も地代の支払いが続き、将来的には借地契約の更新についても考える必要があります。
最初の話し合いですぐ売却へ進めることはせず、兄妹それぞれの考えを確認しながら時間を置き、最終的には2人とも売却に同意。使う予定のない実家と借地権を整理することができました。
不動産 | 借地上の戸建住宅 |
相続人 | 兄・妹の2名 |
利用状況 | 相続後約3年間空き家 |
兄妹の状況 | 2人とも別に自宅を所有 |
主な課題 | 妹が「実家を残したい」と売却に反対 |
費用負担 | 兄が主に地代を支払い |
将来の懸念 | 地代の継続、借地契約の更新 |
最終結果 | 兄妹2人が売却に合意 |
相続したのは、土地ではなく借地権と建物
親が亡くなった後、兄と妹が実家を相続しました。
ただし、土地そのものを所有していたわけではありません。土地は地主から借りており、その上にある建物と借地権を引き継いだ形です。
相続後も家は残っていましたが、兄も妹もすでに自宅を所有しており、どちらかが実家へ戻って暮らす予定はありませんでした。
家の中には親の荷物が残り、兄がときどき現地へ行って換気や建物の状態を確認していました。
完全に放置していたわけではありません。ただ、実際に生活する人がいない状態のまま、約3年が経過していました。
誰も住んでいなくても、地代の支払いは続く
最初にご相談をいただいたのは兄からでした。
兄は、今後使う予定がないのであれば、借地権を売却して実家を整理したいと考えていました。大きな理由の一つが、毎月の地代です。
借地上に建つ家の場合、誰も住んでいないからといって地主との借地関係がなくなるわけではありません。土地を借り続けている限り、地代の支払いも続きます。
今回、その地代を主に負担していたのが兄でした。
自分が住んでいるわけでもなく、妹が利用しているわけでもない。それでも毎月支払いだけは発生します。
兄からは、「誰も使っていない家のために、この先いつまで地代を払い続けるのか」という不安がありました。
妹は「実家だから残したい」
一方、妹は売却に前向きではありませんでした。
理由は売却価格ではなく、「親が残した実家なので、できれば残しておきたい」という気持ちです。
誰も住む予定がないことは、妹自身も理解していました。
それでも、親が暮らしていた家を手放すことと、今後そこに住むかどうかは別の問題です。家族で長く過ごした実家には、経済合理性だけでは整理できない感情があります。
兄が「使わないのであれば整理したい」と考えていても、それだけで妹が納得するわけではありませんでした。
「とりあえず残す」場合も、借地関係は続く
借地上の実家でも、「今すぐ決めず、とりあえず残しておく」という選択はできます。
ただし、その間も地代は発生し、地主との借地関係も続きます。
今回、兄が気にしていたのは現在の負担だけではありませんでした。今後も所有を続ければ、建物の管理に加え、借地契約の将来についても考えていく必要があります。
誰も住まない家を残すために地代を払い続けるのか。将来も借地関係を維持していくのか。
兄にとっては、「空き家を残すかどうか」だけではなく、その先まで続く負担をどうするかという問題になっていました。
最初の話し合いでは売却にまとまらなかった
兄から妹へ売却について話をしてもらい、当社からも売却方法や条件を整理して説明しました。
妹にも電話で内容をお伝えしましたが、最初の段階では売却への同意を得ることはできませんでした。
兄としても、地代負担を早くなくしたいという気持ちはありましたが、そのために妹との関係を悪くしたいわけではありません。
そこで、すぐに結論を求めるのではなく、一度時間を置くことにしました。
妹へ繰り返し売却を迫るのではなく、兄と状況を確認しながら、もう一度話せるタイミングを待ちました。
誰も住まない借地上の実家でも、地代は続きます
「相続したが誰も住んでいない」「自分だけ地代を払っている」「家族の一人が実家を残したいと言っている」というケースでは、すぐに結論が出ないこともあります。
ただし、判断を先送りしている間も借地関係と費用負担は続きます。今後誰が使うのか、誰が地代を負担するのか、将来的に借地関係をどうするのかまで考えておくことが大切です。
時間を置いた後、将来の負担を改めて整理
その後も実家へ誰かが住むことはなく、兄による地代の支払いは続きました。
その間も何度か兄と話をしながら、妹と再び話せるタイミングを待ちました。
当初は兄も「妹の気持ちもあるので、もう少し待ちたい」と考えていましたが、時間が経つにつれて、この状態をいつまで続けるのかという不安が大きくなっていきました。
そこで再度話し合う際には、単に「売った方が得だから」と説明するのではなく、誰も実家へ戻る予定がないこと、地代の支払いが続いていること、建物の維持管理が必要なこと、そして借地関係を今後も続けるのかという点を一つずつ整理しました。
最初の話し合いから時間が経っていたこともあり、妹も「実家を残したい」という気持ちだけでなく、残した場合に今後どのような負担が続くのかを具体的に考えるようになりました。
最終的には妹にも売却について同意していただき、兄妹2人の意向をまとめることができました。

これまで兄が負担してきた地代も整理
売却することが決まった後には、それまでの地代負担についても確認しました。
実際には兄が中心となって支払っていたため、借地権を売却するのであれば、それまで自分が負担してきた費用についても兄妹の間で整理したいという考えがありました。
そこで売却時には、過去の地代負担についても確認し、売却代金の中から一定の精算を行う形で整理しました。
相続不動産では、最終的な売却価格だけではなく、売却までの間に誰が地代や管理費などを負担してきたのかが、後から家族間の問題になることがあります。
売却について合意した後、こうした費用まで一緒に確認したことも今回のポイントでした。
この案件で大切だったこと
今回、借地権そのものが売れないことが問題だったわけではありません。
難しかったのは、「実家を残したい」という妹の気持ちと、「誰も使っていない家の地代を払い続けるのは難しい」という兄の負担をどう整理するかという点でした。
どちらかの考えを否定して結論を急ぐのではなく、実家を残した場合に今後何が続くのかを具体的に確認したことで、最終的に兄妹双方が納得できる形で整理することができました。
借地上の実家を相続した場合は、「今売るかどうか」だけでなく、今後誰が利用し、誰が地代を負担し、借地関係をいつまで続けるのかまで考えることが重要です。
厄介不動産の整理事例を書籍でも紹介しています

書籍『自分の不動産が“厄介”になった時に読む本』では、借地権・底地、相続、共有不動産、私道など、複数の関係者が関わる不動産について、さまざまな事例を交えながら整理の考え方を紹介しています。
借地権は、所有権の不動産とは異なる確認や調整が必要になることがあります。
相続した借地上の実家をどうするか迷っている方へ
「相続したが、誰も実家に住んでいない」
「自分だけ地代を払い続けている」
「家族の一人が実家を残したいと言っている」
「このまま借地権を持ち続けてよいのか分からない」
このような場合、すぐに売却を決める必要はありません。
ただし、誰も利用しない状態でも、借地関係と地代負担は続きます。
現在の利用状況や家族の意向、地主との関係、将来の借地契約などを整理しながら、借地権を残すのか、売却するのかをご相談いただけます。





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